大阪に行った時にAnycaでディーラーが貸し出しているA110に乗ってきた。
ちょうど良い距離だったので信貴生駒スカイラインを走った。結論から言えばA110で走るのに最高の環境だった。
A110について
エンジンを座席の後ろに配置し後輪を駆動するMRのスポーツカー。フェラーリやランボルギーニなどのスーパーカーカテゴリを除いたら他にポルシェ718くらいしか現行機種に残っていないMR.
MRという駆動方式のほか、走りのために車体の大部分をアルミ・その他は樹脂で構成するというストイックさ、最近のピュアスポーツカーらしくなく威圧感の抑えられたデザインなどが気になっていた。
A110に乗った感想
前提として所有したことのある車はMAZDA3のみで、他に乗ったことのある車というとスープラとNDロードスターくらい。 そもそもスポーツカーをまとまった時間乗ったことはそんなにない。
走り出し〜街中
ディーラーで借りて乗り込んで一番気になったのは室内のにおいで排気なのかエンジンルームから漂っているのかガソリンか油脂類っぽい香りが漂っていた。
書きながら気がついたけどカートに乗った時にも感じたにおいだ。まずこれでテンションが上がった。
それからディーラーを出てから街中を40km/h程度で移動するとトルコンATとDCTの違いに気付く。クリープ現象で生じる力が格段に少ない。 仕組み上そうであるということは知識としては知っていたけれど、実際に乗ってみるとどれくらい違うものかの感覚が養われた。
確かに渋滞とか近くに歩行者がいるような狭い道で最徐行しないといけないようなシーンだとトルコンATのトルクがあると便利と感じるかもしれないが慣れの問題で片付けられる範囲だと思った。実際、すぐ慣れた。
また、そこそこパワーのあるスポーツカーであるA110といえど、ノーマルモードで常識的にアクセルを踏む限りは扱いやすい加速をするのできちんとしたアクセルワークを心がければ不便しなかった。
次に気になったのはアイドリング時の振動で、回転数を上げた時の振動とは違うプルプルした振動が背中から伝わってくる。
ブレーキというか減速・停止時は軽く踏んでキャリパーがディスクをやさしく噛むくらいでも予測しやすい速度変化を起こすので怖くなかった。
スポーツカーのブレーキは効きが良くてカクカクするイメージを持っていたけどそんなことはなかった。これは車体の軽さも手伝っているのかもしれない。
高速道路
高速に乗る時の合流1回目はノーマルで加速してみた。回転数がある程度上がるとタービンがまわって過給がかかる音がして気持ち良い。
過給されても急激な変化は起きず、エンジン音から想像するよりははるかに扱いやすかった。
帰りにスポーツモードで踏んでみたらわりと良い加速で、普通にシートに抑えつけられるほどのGは発生する。
ただ当然ながら直6のスープラのびっくりするようなGは起きなかった。まあこれはスペックを見比べてもそうだろうという感じはあるし、借り物の車で緊張していたということも差し引かなかければいけないだろう。
ワインディング
そしてお楽しみのワインディング。これまでの道程も十分に楽しかったけれど、本領を発揮したといえるのはここだろう。
スポーツカーだからそれは当然というものかもしれないが、コーナーでの姿勢変化や接地感がわかるというのはこういうことか!そして四輪をきちんと使えているということはこういうことなのか?ということに気付いた。
MAZDA3でワインディングを走っている時、ちゃんとブレーキを使って荷重移動させてあげないと不快な横Gが生じてしまう。 ドリンクホルダーにさした缶が音を立てるような。それをいかに抑えるかというところがワインディングを走る楽しみだと理解している。
A110は、同じくらいの速度・同じくらいの曲率のコーナーに入ってもその横Gが発生する閾値が圧倒的に高い。というか当日走ったうちではほとんどそういう横Gを感じるほどのシーンはなかったように思う。
慣れてきて、またA110のキャパシティの高さを感じ取ってから、MAZDA3だと明らかに足りていないくらいのブレーキングでコーナーに入ってみてもまったく挙動が変わらず、だいぶ (自分の中では) 荒い運転をわざとして始めて感じるくらいだった。
またスポーツモードにした時の変速スケジュールの速さもさることながら、特にシフトダウンした時のバブリング音が派手でめちゃくちゃ楽しい。 スマートな見た目をしているし実際、ノーマルモード中はそうなのに豹変ぷりがすごい。
とにかく乗っていることが楽しくて昼食を食べる時間も惜しくて、というか忘れてずっと走っていた。
不便だったり困ったところ
一方、やはりどうしても失われた利便性や少し古い設計を感じる場面もあった。
360°ビューモニターがないのは筆頭で、特に借りていたということもあって駐車時などには気を遣ったけれど、こういう時に360°ビューモニターがあればなあ……と思わずにはいられなかった。
まあ自分の車にして車体感覚が身につけばある程度は気にならなくなるのかもしれないが、それにしたってどうしたって死角は生じるものだから、高い車だからこそあったら良いのにとは思う。
関連して、バックモニターは付いているものの画質はVGAくらいでそもそも粗いうえに画角もやや狭いので後退する時の周囲の情報を得るにはいささか心許ない。
特にA110はMRなので後方視界が本当に終わっているので、考えようによっては360°ビューモニターが無いことより重大かもしれない。
またペダル配置は明白に窮屈だと感じた。日本人の平均的な体型と比べて特別大きいことはまずないのに左足も右足も爪先が側面に当たって踏み込む方向に気を遣わないといけなかった。
旧リネージグレードだったのでシートリクライニングが備わっていたり座面調節が楽だったりしたけれど調節範囲は知れたものだった。
ここらへんは普段乗っているMAZDA3, マツダ車の良さだなと改めて実感した。これらが欠けているから乗れないとか魅力がスポイルされているとまでは思わないけれど、長時間車に乗っていることを助ける立派な機能のひとつだと改めて感じるところで、運転体験の楽しさを押し出すなればこそ良いポジションを取れたらなお良かったのにとは思う。
またマイナーチェンジする前のモデルだったのでAndroid AutoやApple CarPlayに対応していなかったのは不便だった。これは現行モデルでは追加・対応されたので新車を手にするなら特に困ることはなさそう。
むすび
YouTubeでレビューを見るくらいで縁がないだろうなと思っていたA110に乗れてすごく良い体験ができた。
自分の中で「なんとなく憧れていつか乗れたら良いな」というところから解像度が上がって自分の観点において微妙な点や楽しい点をきちんと見つけた上で改めて楽しい良い車だという地に足ついた評価に至った。
一方で改めてNDロードスターの良さを感じたりもした。RFなら2L NAでA110には当然及ばないもののそれなりのパワーがあり、安定のドライビングポジションが約束されており、それでいてワインディングを走る楽しさもあった。何よりA110の半額以下である。
まだ乗ったことはないがメガーヌR.S.も乗ってみたくなった。
と、いろいろ冷静になったようでいてその実、めちゃくちゃA110が欲しくなってしまって困った。