1期の劇場版が新規カットと新録により新しい物語の見せ方がなされていたので、今回もそういうアレンジを期待したし、実際その期待は適った。
あすかと久美子を主軸に据えた話になるとアナウンスされていたけど、2期は希美とみぞれのエピソードが展開されていた頃から通してあすかのパーソナリティを見せていく話だったので、二人のエピソードをどう絡めるのか気になっていた。
答え合わせをすると、ほとんどすべてがカットされ、合宿は時系列を入れ替えて関西大会の後に催されることになった。
滝先生のエピソードもカットされたことで、あすかと久美子のエピソードはもちろんのこと、麻美子 (お姉ちゃん) との関わりが久美子にとってあすかに踏み込む大きなきっかけだったのだという見せ方になった。
TVシリーズ2期を通して見た時は、久美子のあすかに対する気持ちは、希美とみぞれや滝先生を通して少しずつ募っていったように見えたけれど、この劇場版では久美子があすかをお姉ちゃんにだぶらせていることがはっきりとわかりやすい形で整理された。
特に通学途中の電車内で思いがけず涙を零すところはよりウェットな演技になっている。
その他、TVシリーズで「ん?」と思った演技が、自分にとってはわりとしっくりくる演技になっていた。あすかの「もうみんなうるさい」とか。
ちょくちょく挿入されるあすかにまつわる新しいシーンが、ひとつひとつは些細な内容なんだけど、これまであすかの人となりが知れるエピソードが絶望的に少なく人間的でないとさえ思えていたので、一度見ただけで最後の卒業式後の久美子とのやりとりがとても尊いものと思える流れになっていて素晴らしい。
全国大会の演奏後、あすかがユーフォニアムを抱えて仁王立ちするイメージシーン、なんかすごい胸に来るものがあった。TV2期の一番最初に発表された仁王立ちする久美子のキービジュアルとだぶって、偶然のような気がするけど勝手にあれは全国に行きたいぞっていう気持ちの表れの仁王立ちなのかなって思っていたので、そういうあれこれが発露したのかな、って思うとね……。
あとは模試の結果を受け取って職員室から出たあすかが感極まるシーン。やっぱりあなたもそう思うよね、って嬉しくなったし、よかったねって声をかけたくなる。さっと切り替えて歩き出すのがあすからしいけど。
いろいろよかったなと思うところをあげるときりがないけど、これまで推し量るばかりだったあすかの原体験とか内面がはっきりと描かれていて、ほんとうに良かったなと思う。
見る人にとって伝わりやすいかたちになっているという意味でもいいし、なにかと押さえ付けがちなあすかの気持ちを奇をてらうことなく描くのは、あすかにとってもはなむけになるというか、いいことであってほしいなあと思う。
あとは劇伴がすごくよかった。これまでで最もミニマルで、旋律らしい旋律も劇場版1作目と比べてもだいぶ少なかった気がする。劇場のいい音響で聞いた弦単発の音の臨場感とかが、なんとなく『聲の形』を思い起こさせるなあ。
久美子が卒業式であすかに告げた「あすか先輩みたいなユーフォが吹きたい」という言葉がTV2期のときから大好きで、ひとりのプレイヤーとして、ユーフォニアムが好きな田中あすか個人として、部活の先輩として、こんなに親愛に充ち満ちたメッセージはないだろうし、卒業を経てひとつの別れを迎える前にそういう言葉を贈られる関係になれたのはほんとうにほんとうにいじらしく尊いと思います。
そして今作ではこの卒業式のシーンのあとに堤防であすかが「響け!ユーフォニアム」を吹くシーンに繋がるという演出になっていて、3回見たけど3回ともここで胸一杯になる。
そのほか気になったこと:
- 低音パートに囲まれて「あすか先輩どうだった?」と聞かれるシーン、後藤が「今後のためになるって考え方もあるけどな」って言うシーン、夏紀が顔半分だけで見上げているのがかわいいしカップルっぽい
- まさかの『宝島』がフル尺
- パーカッションパートがノリノリでかわいい