広島と尾道

この記事は筆者が見た夢を一人称視点で叙述した内容です。事実ではなく、実際の人物等とは一切関係ありません。

2日と6日に勢い休みをとって大型連休を完成させたものの予定はなかった。連休初日にPENTAX K-1がやってきたことだし、写真を撮りに出かけるしかないと思い立ち広島と尾道に出かけた。

荷物を入れる鞄に悩んだけれども、日中に出歩くときはショルダーバッグにカメラを入れて着替えなどはトートバッグに入れてホテルなりロッカーなりに預けることにした。
当たり前とされる生活の知恵っぽいけど、実際のところ合理的だしロッカーなり預ける先のあてがあるならばこれからもそうしようと思った。

広島

京都のほうも最近は春も過ぎ初夏の空気が漂うが、広島市内は特に日差しが強い。歩くことが好きだしあまり苦に感じないが、少し歩くだけで疲れるので相当なものだろう。

新幹線の中で『響け! ユーフォニアム』の2巻を再び読んだで降り立ったところ、駅の地下にある広場で地元の中高生と思しき人たちがちょうど演奏を終えて記念撮影をしているところに出くわした。
もしも演奏の最中でそれを聞いていたのなら、どうなってしまっただろう。

広島に行く決めたものの特に見たかったり行きたかったりした場所があるわけではない。ただ街並みが好きでまた訪れたいなあ、とぼんやり考えていたところだっただけ。

ひとまずホテルから近いので縮景園を目指す。以前にも訪れたことがあり、都会の中に突如として庭園が現れる歪さがあるものの、こじんまりとしながら高低差があり景観にめりはりを与える工夫のこらされた美しい場所という印象が残っている。
前回はあまり天気に恵まれなかったので、厳しいくらいの日差しが注ぐ中でもう一度目にしたいという気持ちもあった。

穏やかな回遊式庭園を前にし、またK-1にも慣れてきたのでシャッターを切ることが楽しくなってきた。
これまで使ってきたK-7, K-3の操作性を受け継ぎつつ、新たな領域へ誘ってくれる機能や改善が備わっている。

縮景園を出てどうするか悩んで、広島城を目指した。夕方で開いているかどうか怪しかったけれども、たとえ調べもののためだとしてもあまりインターネットを見たい気分でもなかったので、そのまま向かう。

方角も記憶に頼って少しあやふやなまま。徒労を覚悟の上でというより徒労がほしくて歩く。着いたけど、前に来たときはあまりおもしろくなかったなあ、ということを思い出して、堀のそばにあるベンチに座る。

ふと新白島駅が近いことに気がつく。JRだったかアストラムラインだったか駅舎が穴のあいているおもしろい見た目だったし、最近は『田中くん』にも登場したし、行きたいと思っていた。

穴のあいている特徴的な駅舎はアストラムラインだった。JRも新駅を開業したのだった気がする。たしかにおもしろい見た目だったけど、もうちょっと大きかったような。報道写真の妙か記憶違いか。

JRへの連絡階段を上がって駅舎を眺めたり撮ったり。宮島方面への電車が停車したところ赤いユニフォームを来た人たちが続々と降りてきた。カープのデイゲームがあったのだろう。子供から大人まで揃ってユニフォームを着ている姿を目にすると広島に来た実感が湧く。

そろそろいい時間になってきたしお腹も空いてきたので夕食のことを考えはじめる。やっぱりお好み焼きが食べたいなあと思って調べる。だいたい繁華街のある辺りへ向かえばなにかしら食べられそう。

歩き疲れたのでアストラムラインに乗る。アストラムラインの駅から銀山町まで少し歩く距離だしせっかく広島市に来たからにはということで広電に乗って向かうことにした。

目当てのお好み焼き屋はどこも行列ができており、さすがに3件目のあてが外れたときにはどっと疲れた。幸い繁華街だったので、ここからホテルまで無軌道に歩いてみて入れそうな店を見つけたらそこにするということにした。

幸いすぐに見つかって入ることができた。お好み焼きがどれくらいの量で出てくるかあまり思い出せずにアスパラ焼きと一緒に注文した。かくしてやってきたお好み焼きは満腹になるほどの量だった。

入ってすぐはほとんど客がいなかったが、ほどなくしてカープファンが6人ほどやってきて賑やかになった。野球観戦をしてそのまま打ち上げでお好み焼きを食べにくるとは、なんてステレオタイプな人たちだろうとちょっとおもしろがった。

めずらしくお酒を飲んだし旅情にほだされていい気分だったので広島駅の近くの川沿いを酔い覚ましに歩いた。酔った勢いで行き交う広電を流し撮りしてみたもののまだ酔いの残る頭で見ても明らかにひどい出来だった。

水分補給にとコンビニでジャスミンティーを買ったが、カフェインが入っていたらしく寝る前にゴクゴク飲んだところまったく寝付けなかった。睡眠時間は短く眠りも浅かったが、それでもベッドで一晩横になったらまあまあ疲れはとれたらしかった。

10時前であまり店があいてなかったので、駅の地下でベーグルを買い、ドトールで抹茶ラテを買って電車を待つ。しかしこの抹茶ラテ、変なものでも入っているのではないかと疑いたくなるほど舌にピリピリくるので飲み切らずに処分してしまった。

山陽線の道程は長い印象が強かったが実際は1時間半ほどで尾道に着くようだった。

尾道

尾道に着いてからまずU2のコインロッカーに荷物を預ける。

昨日に続いて気持ち良く晴れたが、靄のような雲が少しあり、また海からの風がありとても涼しい。

観光客も多いが修学旅行かなにかと思しき中高生も多い。カフェに入ってジェラートを買い食いしていく。

誰かと一緒に歩きまわっていた時には気がつかなかったが、駅から千光寺行きのロープウェイ乗り場のある辺りまでかなり東西に距離がある。時間を意識して歩いたことがなかったし大抵なにか話していたから、歩くと10分以上かかることに気がつかなかった。

尾道に来たら御袖天満宮に行くことにしているのでまずは向かう。街中より標高が高く、木陰もあるのでより涼しい。

涼しく感じるとはいえ日差しは強く喉も渇いてきたので、降りて水分補給。春夏秋冬に関わらず尾道で喉を潤したいときはチャイダーを買って港のあたりに座って向島を眺めながら休憩。傾いてきたものの相変わらず日差しは強いまま。

帰りの新幹線を予約する。悩んだけれども既に歩き疲れたしいつも乗る便よりひとつ速いほうにした。

今日は夜景を撮りたいなと思っていた。もともと観光案内などで目にして綺麗だと思っていたし撮ってみたいと思っていたけれども、腕とか道具が足りてないなあと感じて及び腰だった。

しかしK-1は高感度が段違いに良いしFA 31mmは広角の画角を取り戻した。少なくとも道具に関しては不足がないし、よく尾道に訪れているのだから珍しいことをしてみようと静かに決めた。

千光寺の展望台で撮るのがよさそうだけど、ロープウェイは確か最後の便が夕方なので徒歩で登らないといけない。夜景を撮るということは日没前後に徒歩で登り降りするのでロケハンしたほうがよかろうということで歩いてみた。

尾道城のほうから登る道を歩いてみたところかなり勾配がきつくて汗だくになった。10〜15%どころか20%くらいあるのではないかというきつさ。

帰りは千光寺新道を降りてみたが、ここがよく歩いたことのある道だった。勾配もきつくなく直線なので駅からも近そう。しかし降りたころにはまた汗をかいている。コインロッカーで使うためお札を崩すためだけにU2で買ったハンドタオルが思いがけず役立つ。

新幹線の時間ギリギリになりそうなのでU2に預けていた荷物を取り出して駅前に預け変えた。このときに鞄の中身を整理しK-1とFA 31mmだけにした。あまりに疲れてきたのでコンビニでRed Bullを買って飲んだ。たとえ元気の前借りであろうとも、今まさにこの瞬間に借金してでも手に入れたい元気がある。

ちょうどいい時間になったので再び千光寺新道へ向かう。日も落ちてきて明かりの灯ったセンター街を歩いているとどうしようもなく感傷的な気分になる。

時間と足元を気にしながら千光寺新道を駆け上がる。やがて視界に入ってくる向島に興奮してくる。決して息が上がっているだけではないはず。途中、運行が終わったはずのロープウェイが動いているのを見て溜息が出た。マジかよ。登りながらずっと言っていた。

千光寺に着いて振り返ればマジックアワーに染まる向島と尾道大橋が目に入った。ほとほと歩き疲れ、汗をかいて体は火照っていたのに寒気を覚えるくらいに胸が締め付けられた。美しいけれども一日も旅も終わってしまうという感傷に潰されそうで、まだ少し明るい街並みを眺めながらもうちょっとだけこのままが続けばいいのにと思うばかりだった。

ロケハンをしたときあまりに疲れてこのまま帰ろうかと思ったけれども、これまでに何度か尾道を訪れたがこんなに天気のいい日は珍しく、さらに自分が納得できる写真が撮れる道具を手にしているという巡り合わせは、この先そうそう何度もあることではないからと自分をなんとか鼓舞したが、本当に来て見てよかった。

アルコールの入っていた昨日の広島よりよっぽどおかしな気分のまま帰った。

あまりに寂しい気持ちになって、改めてまた来たいと思った。また来る。