音大を諦めたときに、音楽にすべてを懸けること、音楽に自分を懸けることも諦めていたのだな、ということを思い出す。
実力だとか、熱意だとか、そういった音楽に対するいろいろなすべてで、絶対に一番でありたいとおもった。どうやって「一番」を決めるのか、なんてわからない。とにかく、世界中の人間におれの手で音楽を届けたい。音楽の素晴らしさに気付かなくてもいい。「音楽を聞いた」という体験をもってほしい。そこから何が生まれるのかはわからない。けど、とにかく、世界中の人間に「音楽を聞く」という革命的な事件を巻き起こしたいんだ。
なんでもいいのかもしれないけど、一番思い入れがあるから、ピアノでそれを為し遂げられたらいい、とおもっている。他に数多いるすごい人間のことを考えて逃げ出そうとして、何回も両手を潰そうと考えた。これから、死ぬまでのあいだ、「やむをえぬ理由でピアノが弾けない体」になってしまえば、きっと、勝負から逃げる正当な理由になるとおもった。けど、ピアノが弾けない苦しみを想像して涙があふれてくるし、現に弾けない状況の今に、どうしようもないストレスを感じている。
おれを満たしているもののほとんどが音楽であり、音楽によって生かされてきたから、だから、音楽に身を捧げたいとおもっている。