リズと青い鳥

先行試写会で見てきた。核心に触れない程度の感想。

原作に登場した「練習中にある曲の圧倒的な演奏で聴衆を圧倒する」というシーンは、素人に暴言を吐かせてもらうと、小説という媒体では易々と表現できるが映画では音楽がある以上直接的な表現を避けられぬことで、とてもハードルが高かったけれど、劇場で見た感想としてはしっかり越えてきたということです。

音楽的にはそこがピークなんだけど、その演奏の流れをさらに越える、静かだけど燃えるような二人の人物のやりとりは映画を締め括るに相応わしくとても美しかった。

僕は、みぞれのとても単純な欲望に駆られて動き続けるさまを歪だけどとても美しいと思うし、そのシンプルな願いは満たされるといいなとずっと思っているので、どうしても偏った見方をしてしまうけれど、それにしても希美はずるいなと感じる。

ひらりひらりとかわし続けて、なにもかもごまかす。けれど、みぞれのことが気になる。しかし正面から向き合うことはない。自分がちゃんと向き合わなくても、みぞれはすぐそこにいる。自分の一番を注がなくても、自分はみぞれにとって一番であり続ける。安全なところから半身で、みぞれの全身全霊を奪いつづける。そういうありかたをずるいと思う。

だから一連のできごとについて、しっぺ返しのようだと思った。みぞれを認めてあげられるのは自分だけ。自分は常に与える側で、みぞれはそれを享受する側。そういった前提を根本から覆される。嫉妬することすら屈辱。自分が橋渡しした音楽によってとどめを刺される。何もかもズタズタにされたけれど、みぞれは「希美と繋がるために音楽を続けてきた」と言う。どれだけ惨めな目にあってもみぞれは手を離さない、離してくれない。

もはや二人のあいだのできごとですらないような、一人と一人の空回り。その空回りのひとつひとつを零さずに閉じ込められた映画として、とてもとても素晴らしいものでした。