凛として時雨

凛として時雨を他人に勧めるときは、だいたい決まって“Feeling your UFO”を貸す。

Feeling your UFO

Feeling your UFO

アップテンポな曲と345をフィーチャーした曲とビートが立て込んだ曲、ドラマティックなミドルテンポの曲、とうまい具合に5曲に凝縮されているから……というのはたぶん建前で単に“Sergio Echigo”を聞いてみてほしいから、だと思う。

後半にかけて Es-Dur → E-Moll → G-Moll と転調していく展開はドラマティックだと思う。E-Moll に転調してからのギターはまったく新しい景色を見せるような、シンプルだけど音づくりもアレンジも素晴らしい部分だと思う。

まあ、他人から知らないアーティストを勧められてフルアルバムを貸されてもよくて最初の数曲を聞くくらいだろうから、これくらいだったら聞いてもらえるだろうと思う。

脈ありそうなら“#4”を勧める。

#4

#4

およそ今の凛として時雨の流れはこの“#4”, “Feeling your UFO”が基になっていると思う。

最初の3曲は特にライブでも定番だし、やっぱり凛として時雨のキャラクターを象徴する3曲だと思う。

このアルバムは後発の作品に比べるとだいぶ素直なアレンジ (それでもわりとややこしいと思うけど) で、TK のメロディメーカーっぷりがよく味わえると思う。

特に4〜6曲目は、まだ TK がウィスパーっぽい歌い方をしていないころの貴重な (?) ミドルテンポの曲で、声もずいぶん若いかんじで張りのある、しかしリリースを少し下げる歌い方をしている。

この哀愁漂うような狂気を感じさせるような歌い方は、このアルバム独特のものであとの作品でなかなか聞けない。

4曲目“ターボチャージャーON”の4:10〜のドラムはキックは16分でドコドコしつつもライドのカップを叩いてキラキラさせて実に上下に広がりのある音を出している。

9曲目“傍観”はここしばらくのライブのトリとして定番の曲だけど、このアルバムでは次に“TK in the 夕景”が続くのでだいぶ印象が変わる。

公民館で録音したというこのアルバムは音の分離があまり良くなくてロックバンドの生々しさみたいなのがあったり、TK がけっこうクランチっぽい音作りをしていたり、345が SBV を使っているのでミドルががつんとくるベースを弾いていたり、最近の曲からするとだいぶ懐しさすらおぼえるかんじがある。

i'mperfect

i'mperfect

その次は“i'mperfect”を勧める……というか、“#4”まで聞いてもらえるほど興味を持ってもらえたらあとは好きにどうぞ、というかんじだけれど。

3曲目“Metamorphose”みたいなヒステリックというかフリーキーな曲はその前のフルアルバム2枚ではなかなか聞けなかったので復活というかんじ。しかし、ワーミーをソロに取り入れたり、サビで三連シャッフルになったり、ちゃんと梃入れしている。

7曲目“MONSTER”はもっとおしゃれな横ノリの曲になってもおかしくなさそうだけれど、ちゃんと (?) ファンキーで少しミドルの強いギターだとかサビの少し重いビートだとか、いなたい感じの曲もやるんだな、という発見がある *1。心無しか録音されているギターも少ない (1本?) 気がする。

Inspiration is DEAD

Inspiration is DEAD

より好きモノになった人には“Inspiration is DEAD”も勧める。

このアルバムを通して聞くとだいぶ疲れる。他の作品と比べてドンシャリ気味なのでシンバルがうるさく聞こえる、という面もあるだろうし、やはり他の作品と比べて TK がかなりヒステリックにシャウトしているという面もあるだろうと思う。

心無しかライブで登場する機会に恵まれない曲が多いかもしれない。その代わり“nakano kill you”と“DISCO FLIGHT”はリリースされてからはほぼ皆勤と言ってもいいかもしれないくらいの定番になっている。ライブでは TK が “nakano kill you” のソロでタッピングするアレンジになった。

初期 *2 からある曲が収録されているのはこのアルバムまで。“赤い誘惑”, “夕景の記憶” 共に、アルバムの他の曲に負けないくらいささくれ立っていてる。

just A moment

just A moment

still a Sigure virgin?

still a Sigure virgin?

“just A moment” と “still a Sigure virgin?” はソロ *3 への流れに繋がる作品という感じがする。

“a 7days wonder”や“シャンディ”はソロでやってもおかしくない曲だと思う (実際、“シャンディ” はソロで演っていた)。

“moment A rhythm”のソロはライブと違ってディレイを使っていなくてミドルが押し出されたギターソロ然としたいなたいアレンジになっている。

また ライブでは Ges-Dur だけどアルバムでは Fes-Dur になっている。Fes-Dur のほうが冷たいかんじがしてこれもまた乙。

この先にはソロやあるいは他のバンドが広がっていたりする。

凛として時雨は math rock に踏み入れている、みたいな見方をしている人もいるけれど、一方ですごくいなたいというか野性的というか、そういう粗さも持っている。実際、ドラムのキックの粒が揃っていなかったり、それこそ粗を探そうと思えばいくらでも出てくる。

むしろ凛として時雨のスリーピースバンドとしての魅力はそういう粗暴で荒々しいプレイがなんとかギリギリのところで形を保っている危うさなのだと思う。

凛として時雨をそこそこ気に入ってくれた人には積極的にライブを勧めている。ライブだとかなりアレンジが違う曲もあるし、やっぱりこのバンドは目の前であの3人で演奏しているところを見せつけて聞いている人をどうにかしてさせてしまう力のあるバンドだと思っているので、ぜひ目の前で緊張しながら見てほしいと思う。

*1:これは“a 7days wonder”とかの流れを汲んでいるのかもしれない

*2:#1, #2, #3, として

*3:TK from 凛として時雨